■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□□■□行政法(行政手続法 行審法 地方自治法等)専門メルマガ 4号 H20・8・17
◆◇◆目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◇◆◆◇◆
1.行政調査の範囲と限界…税務調査と刑事責任の追及の可能性
(参考:最判平成16年1月29日判決)
2.創刊の挨拶と第1回発行メルマガ「行政法の改正の流れ止まらず」のご紹介
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1.行政調査の範囲と限界…税務調査と刑事責任の追及の可能性
(参考:最判平成16年1月29日判決)
税務調査の手続での収集証拠が,犯則調査又は犯罪捜査で利用される場合には
税務調査の手続は,質問検査の権限を犯則調査又は犯罪捜査のための手段として行
使したことになるから違法なのであろうか。
判例を見てみましょう。
(3)判例(最判平成16年1月29日)
◆事案
被告人は愛媛県内に本店を置き,砂利の採取販売等を目的とする株式会社であ
る。被告人は経理統括者と共謀の上,両社の売上の一部を除外し,架空経費を計上
するなどの方法によって所得を秘匿し,平成元年から平成4年にかけての事業年度
にわたり計2億9000万円余の法人税を免れたものとして起訴された。
起訴に至る前には、税務調査が先行しており、それを踏まえてその後査察調査
が行われて起訴されたのである。
■「判旨」
「法人税法56条によると,同法153条ないしl55条に規定する質問又は検査の権
限は,犯罪の証拠資料を取得収集し,保全するためなど,犯則事件の調査あるいは
捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。
しかしながら,上記質問又は検査の権限の行使に当たって,取得収集される証拠
資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても,そのこと
によって直ちに,上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のため
の手段として行使されたことにはならないというべきである。
原判決は,本件の事実関係の下で,上記質問又は検査の権限が,犯則事件の調査を
担当する者から依頼されるか,その調査に協力する意図の下に,証拠資料を保全す
るために行使された可能性を排除できず,一面において,犯則事件の調査あるいは
捜査のための手段として行使されたものと評することができる旨判示している。
しかしながら,原判決の認定及び記録によると,本件では,上記質問又は検査の権
限の行使に当たって,取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用さ
れることが想定できたにとどまり,上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査ある
いは捜査のための手段として行使されたものとみるべき根拠はないから,その権限
の行使に違法はなかったというべきである。
そうすると,原判決の上記判示部分は是認できないが,原判決は,上記質問又は検
査の権限の行使及びそれから派生する手続により取得収集された証拠資料の証拠
能力を肯定しているから,原判断は,結論において是認することができる。」
★参照条文
【法人税法】
第百五十四条 国税庁の当該職員又は法人の納税地の所轄税務署若しくは所轄国
税局の当該職員は、法人税に関する調査について必要があるときは、法人(連結
親法人の納税地の所轄税務署又は所轄国税局の当該職員がその連結親法人の各連
結事業年度の連結所得に対する法人税に関する調査について必要があるときは、
連結子法人を含む。)に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務がある
と認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認めら
れる者に質問し、又はその事業に関する帳簿書類を検査することができる。
2 連結子法人の本店又は主たる事務所の所在地の所轄税務署又は所轄国税局の
当該職員は、連結親法人の各連結事業年度の連結所得に対する法人税に関する調
査について必要があるときは、当該連結子法人に対し、金銭の支払若しくは物品
の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受
ける権利があると認められる者に質問し、又はその事業に関する帳簿書類を検査
することができる。
3 分割法人は前二項に規定する物品の譲渡をする義務があると認められる者に、
分割承継法人はこれらの規定に規定する物品の譲渡を受ける権利があると認めら
れる者に含まれるものとする。
第百五十五条 前二条の規定は、国税庁の当該職員及び納税地の所轄税務署又は
所轄国税局の当該職員以外の当該職員のその所属する税務署又は国税局の所轄区
域内に本店、支店、工場、営業所その他これらに準ずるものを有する法人に対す
る質問又は検査について準用する。
第百五十六条 前三条の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認
められたものと解してはならない。
(4)この判例の正しい位置づけ、捉え方と関連問題
ア.人権保障との関連
最高裁の判例は,税務調査としての質問検査についで,「実質上,刑事責任追及
のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続」にあたらな
いことを理由にして,令状主義や黙秘権の保障が及ぱなくても制度上達憲ではない
としている(最判昭和47年11月22日)。
他方で,国税犯則取締法に基づく国税犯則調査には黙秘権の保障が及ぶ(最判
昭和59・3・27)。
イ.本事案と判決の考え
質問又は検査の権限の行使に当たって,取得収集される証拠資料が後に犯則事
件の証拠として利用されることが想定できたとしても,そのことによって直ちに,
上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使
されたことにはならない
このように判決は人権保障との関連で「想定」されても、それは刑事責任追及
の手続とはいえないとしているのです。
ウ.関連事項と問題
●所得税法では,職員は,所得税に関する調査につき必要があるときは,納税者に質
問・検査をすることができ,納税者がこれを拒んだり妨げたりしたときは,罰則が
科せられるとされているので,その性質は刑事責任の追及を目的とする手続である
⇒× 間違いです。行政調査としての税務調査のための手段に過ぎません。
●自己に不利益な帳簿書類等の開示が求められたり,納税者に不利益な質問がされ
たときは,憲法38条l項の保障があり、これを拒むことができる。
⇒× 間違いです。やはり、行政調査としての税務調査のための手段に過ぎ
ません。
●所得税法で認められた税務職員の質問・検査権についでは,その範囲,程度,時
期,場所等は,税務職員の合理的な選択に委ねられてぃる。
⇒○ その通りです。調査日時・場所等の事前通知,調査理由等の告知などはひ
ろく行政庁の裁量が認められています。所得税法で認められた税務職員の質問・
検査権を行使するときは,あらかじめ,実施の日時場所の事前通知,調査の理由及び
必要性の告知は必要でないとされていますが、事前の通知または調査に際しての
理由開示等が留意されるべきとする有力説もあります。
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2.創刊の挨拶と第1回発行メルマガ「行政法の改正の流れ止まらず」のご紹介
■行政法(行政手続法 行審法 地方自治法等)専門メルマガ「創刊の挨拶」
みなさん、はじめまして。このたび、行政法の専門メールマガジンを発行する
ことになりました。発行は、中川総合法務オフィスです。
憲法の予定している議会制民主主義は、行政国家現象の中で大きく憲法制定当
初の意図から変容しています。
それを憲法の変遷という捉え方もありますが、ここでは民主主義の観点から国
家の積極化を肯定した上で、行政権を市民的コントロールに置きながら法を市民
の手に渡し、国民主権的再構成を図りたいと思います。
分かりやすくいうと、もう一度、「法律に基づく行政」を国民や市民に視点を
置いて具体的に実現していくということです。
そのため、政治も含めた法的関連現象を正確に射程内に入れて、現行の行政法
を理解してそれを活用していく縁にこのメルマガがなることを祈っています。
■第1回目は「行政法の改正の流れ止まらず」です。
東京で弁護士をしている後輩のN君は弁護士会の研修の役職を担当しているの
ですが、会社法の研修がずーと続いていた後は「行政法」の研修だそうです。
なぜだか分かりますか。
ある司法研修所教官レベルのかたは「行政法の訴訟は増やす」と断言しています。
この深い意味が分かりますか。
「行政紛争が増えて、行政訴訟が増えていく」という見込みでなくて、「行政
紛争を行政訴訟にしていく」という意思の発言なのですよ。
…略
いままでは、泣き寝入りだったのです。官は強く民は弱しです。
そこで、「行政法の訴訟は増やす」ために、まず実務家の養成です。不動産や
債権などの民事で食っているのがほとんどの弁護士ですから、行政法は知りませ
ん。やっと、新司法試験の科目になりましたが。
次に法整備です。行政事件訴訟法の大改正はご存知の通りです。行政手続法も
もう制定されて15年目です。私の、司法試験の論文で行政手続法の制定が望まれ
ると書いたのが夢のようです。
そして、行政手続法の小改正も続きますが、いよいよ「行政不服審査法」も大
改正されます。
なんと、異議申し立ても再審査請求も廃止です。審査請求1本です。ダメなら間
口を広くした行政事件訴訟法による行政訴訟でしょう。弁護士も大量生産時代で
すから、実務家の新仕事になります。
これからは、もう六法時代はおわったのでしょう。行政法が必須の法律科目の
時代です。
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■編集後記(コラム)
●ちょっと、外国人の入管と帰化案件や著作権処理案件に忙殺されていまして発
行が久々になりまして済みませんでした。
●行政法・地方自治法から政策法務までの担当で、日本全国で自治体研修をする
団体に依頼され研修講師を担当予定です。
裏金騒動が続くO市で行政法の研修講師はもうすぐです。原稿は2部構成にし
ました。
パワーの出る研修したくてセッションなどの工夫をしたのです。
今回これくらいです。それでは、次回はなるべく早く発行予定です。お楽しみ
に。
◆◆ホームページを大幅にリニューアルしました。
http://rima21.com/
(さらにUsabilityの高いホームページに衣替えするために改定中)
⇒間もなくオープンします。
◆事務所のブログもぐっと魅力的にしましたよ。
http://nakagawaoffice.seesaa.net/
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